名スポットは迂回した先に。

【忘れられないふるさとの味#24】炉庵のビルマ汁(栃木県益子町 / 益子駅)

郷土料理やご当地グルメには、土地に根ざした物語と“ふるさとの味”が詰まっています。

「忘れられないふるさとの味」シリーズでは、各地の発祥店や地元の名店を訪ね、懐かしさと旅情に包まれる料理を紹介します。

炉庵のビルマ汁

栃木県南東部に位置する益子町は、言わずと知れた陶器のまち。江戸末期に始まった「益子焼」は、ぽってりと厚みのある温かな質感と素朴な風合いが魅力で、陶器市の時期には全国から多くの人が訪れ、賑わいを見せる。ギャラリーや窯元、おしゃれなカフェが点在し、手仕事好きな人が一度はハマるまちと言っても過言ではないだろう。

ビルマ汁

ビルマ(現ミャンマー)にルーツをもつ郷土料理 Photo by よだ なお

益子の名物「ビルマ汁」は、ドラマチックな由来をもつ郷土料理。戦時中にビルマ(現在のミャンマー)で従軍した飯塚さんは現地で食べたスープの味が忘れられず、帰国後に日本でも手に入る食材で再現したことから「ビルマ汁」は生まれた。この味は近所でも評判を呼び、いつしか益子の夏の名物となった。たっぷりの夏野菜や豚肉を使い、和風出汁とカレー粉で仕上げるのが特徴で、スパイシーながらもどこかほっとする味が魅力。

益子のそば 炉庵

ビルマ汁の他に、地元の蕎麦が味わえるのが魅力 Photo by よだ なお

1時間に1本の真岡鐵道で陶器のまち益子へ。車で移動する方が圧倒的に早いし楽だけれど、のどかな田園風景を見ながらゴトゴト電車に揺られていくのもなかなか風情があるものだ。益子駅で降りて25分ほど歩いたところの「益子のそば 炉庵」は地元産の蕎麦が味わえるとあって、来客が絶えない。

疲れた足を伸ばせる座敷席 Photo by よだ なお

とは言いつつ、今回の目的はお蕎麦ではなく「ビルマ汁」。「ビルマ汁」は、夏になると益子のあちこちの店でメニューに加わるが、「炉庵」もその一つで、ここでは元祖の味をベースにしたビルマ汁を作っているとのことで、期待が高まる。

素朴な雰囲気の益子焼に入ったビルマ汁 Photo by よだ なお

ビルマ汁が益子焼に盛られて運ばれてきた。人参、じゃがいも、茄子、いんげん…夏野菜がゴロゴロと入り、その隙間で豚バラ肉がゆらゆら。見た目は東南アジアな雰囲気だけど、一口飲めばそこにははっきりと和出汁の旨みが。玉ねぎとトマトから甘みが溶け出し、じゃがいもや人参は、口の中でほろりと崩れる絶妙な火入れで絶品。一口、また一口と止まらない。

ビルマ汁の中には夏野菜がごろごろと Photo by よだ なお

遠い異国の家庭料理が日本の食材と出逢い、いつしかこの地に根を下ろしたということが感慨深い。海を越え、時を越え、多くの人に愛されるふるさとの味になった。

帰り道、偶然にもビルマ汁考案者の飯塚さんの子孫が営む店「もおかや」前を通りかかった。あいにくお店は閉まっていたけれど、不思議と「また食べに来てね」と言われている気がした。来年の夏に、また。

施設詳細

店名 益子のそば 炉庵
住所 栃木県芳賀郡益子町益子3508-2
アクセス 真岡鐵道「益子駅」下車 徒歩約25分
北関東自動車道桜川筑西ICから車で約20分
営業時間 11:00~14:30
木曜定休(蕎麦が無くなり次第終了)
駐車場 駐車場あり
備考 公式WEBサイト
炉庵のビルマ汁提供は7月・8月頃。
近隣店では9月頃まで提供している場合あり

案内人

よだ なお

「郷土料理(ふるさとごはん)コーディネーター」として、いつものごはんやおやつに日本各地の郷土料理を作って暮らしています。旅という名の、郷土料理&ご当地グルメ調査に出かけるのがライフワーク。調査と試作を経た郷土料理のレシピを、エッセイとともにInstagramで発信中です。本を出すのが夢。

Instagram ▶︎ よだなおの記事一覧 ▶︎

次に訪れたい、ふるさとの味

全国の「ふるさとの味」スポット
北海道 北海道
東北 青森県 岩手県 秋田県 宮城県 山形県 福島県
関東 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県
中部 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県
近畿 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県
中国 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県
四国 徳島県 香川県 愛媛県 高知県
九州 福岡県 佐賀県 長崎県 大分県 熊本県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県

忘れられないふるさとの味 一覧▶︎

 

▼前回の「ふるさとの味」