名スポットは迂回した先に。

【忘れられないふるさとの味#20】荒木屋の割子そば(島根県出雲市 / 出雲大社前駅)

郷土料理やご当地グルメには、土地に根ざした物語と“ふるさとの味”が詰まっています。

忘れられないふるさとの味」シリーズでは、各地の発祥店や地元の名店を訪ね、懐かしさと旅情に包まれる料理を紹介します。

荒木屋の割子そば

島根県東部の出雲市は神話や自然と今の暮らしが混じり合っている。遺跡や古墳が多く、悠久の時の流れに想いをはせながら、宍道湖や日本海産の魚介類も味わえるのが魅力。出雲大社近くは名産の出雲そばの店も多く、迂回してでも寄りたい旅先だ。

割子そば

出雲そばの特徴的な食べ方「割子そば」 Photo by よだ なお

出雲そば」は、長野の「戸隠そば」、岩手の「わんこそば」と並ぶ日本三大そばの一つに数えられている。出雲そばは、蕎麦の実を殻ごと粉にして使用するため、色が黒っぽく、香りが高いのが特徴。「割子(わりご)」と呼ばれる円形の器にそばを入れて重ねた「割子そば」は、そばつゆを下の段へ移しながら食べ進めるという出雲そばの特有のユニークな食べ方として知られている。

荒木屋

江戸後期創業の老舗中の老舗 Photo by よだ なお

出雲大社の鳥居を外れて数分歩くと、渋い看板を掲げた「荒木屋」に辿り着く。
現存する出雲そば店では最も古く、暖簾を守る店主は8代目。 仕込みには湧き水を使い、 原材料も選び抜いたものだけを使用するなど、240年以上続く味を堪能できるのだから、行列に並ぶのも納得だ。とはいえ回転は早く、予想より早く店内へ入れた。

まずは1段目に薬味を乗せて Photo by よだ なお

注文はもちろん「割子そば3段」。黒っぽいそばの所々には、そば殻の小さな粒々が見える。つゆをかける前に、まずは何もつけずにひと口。 しっかりとしたコシだ。 そば本来の風味と香りが、噛むほどに濃く広がっていく。

さて、今度は薬味とつゆで本格的に割子そばを楽しむことにしよう。

1段目のつゆを2段目へ Photo by よだ なお

3段あることを考えつつ、薬味とつゆの配分は計算しながら…。

1段目を食べ終え、2段目へつゆを移す。薬味をのせ、さらに少しつゆを足す。2段目はネギ多めで、3段目は薬味を全部乗せ。 下へ下へと順に移したつゆは、そばや薬味の風味をまとい、わずかに色も変わっている。

最後はそば湯につゆを注いで全て飲み干す。その凝縮された一口には、思わずため息が漏れた。

明治時代のそば屋台 Photo by よだ なお

店の一角では明治期に実際に使われていたそば屋台が、役目を終えて店を見守っている。さすがの風格に、店の守り神とも言えそうだ。この神も10月には出雲大社に集まるのだろうか?敬意とごちそうさまの両方の意味で、小さく手を合わせた。いろんなものが神様に見えてくる、出雲はそんな街だった。

施設詳細

店名 荒木屋
住所 島根県出雲市大社町杵築東409-2
アクセス 出雲大社前駅より徒歩9分
出雲大社鳥居より徒歩5分
営業時間 11:00~16:00
そばが無くなり次第終了
水曜定休(祝日の場合は翌日)
駐車場 無料駐車場15台あり
備考 公式WEBサイト
予約不可

案内人

よだ なお

郷土料理(ふるさとごはん)コーディネーター」として、いつものごはんやおやつに日本各地の郷土料理を作って暮らしています。旅という名の、郷土料理&ご当地グルメ調査に出かけるのがライフワーク。調査と試作を経た郷土料理のレシピを、エッセイとともにInstagramで発信中です。本を出すのが夢。

Instagram ▶︎ よだなおの記事一覧 ▶︎

次に訪れたい、ふるさとの味

全国の「ふるさとの味」スポット
北海道 北海道
東北 青森県 岩手県 秋田県 宮城県 山形県 福島県
関東 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県
中部 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県
近畿 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県
中国 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県
四国 徳島県 香川県 愛媛県 高知県
九州 福岡県 佐賀県 長崎県 大分県 熊本県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県

忘れられないふるさとの味 一覧▶︎

 

▼前回の「ふるさとの味」