名スポットは迂回した先に。

【忘れられないふるさとの味#19】山女の円盤餃子(福島県福島市 / JR 福島駅)

郷土料理やご当地グルメには、土地に根ざした物語と“ふるさとの味”が詰まっています。

忘れられないふるさとの味」シリーズでは、各地の発祥店や地元の名店を訪ね、懐かしさと旅情に包まれる料理を紹介します。

山女(やまめ)の円盤餃子

新幹線を使えば東京から2時間かからずに行ける福島駅は日帰り旅行や短期間でいろいろな名所を巡りたい旅行者にぴったりな旅先。古くは養蚕と阿武隈川の舟運で栄えた城下町で、今は温泉やフルーツ王国としても知られている。宮城県にも近いのでセットで楽しむのもおすすめ。

円盤餃子

福島名物円盤餃子のハーフサイズ Photo by よだ なお

円盤餃子」の始まりは戦後。満州から福島へ引き揚げた者たちが水餃子の知識を持ち帰って商売を始めたが、いつしかフライパンに餃子を円盤状に並べて焼くようになった。闇市の屋台から始まって70年以上、「円盤餃子」は今や福島のソウルフードとして地元の人だけでなく観光客や出張中のビジネスマンにも人気のグルメとなっている。

餃子の店 山女(やまめ)

味のある店構えが期待感を高める Photo by よだ なお

コートの襟元を強く握る。極寒の東北の木枯らしと戦いながらの駅から徒歩6分は6時間のように感じられて、「餃子 山女」の青いファサードを見つけた時はさすがに涙が出そうになった。砂漠でオアシスを見つけた時も、こんな気持ちになるのだろうか。

着席と同時に準備される、言うなれば「お出迎えセット」 Photo by よだ なお

暖かな店内はログハウスのような板張りの壁に囲まれている。通路は狭く、隣の席との間隔も近い。寒さに耐えて開店を待った者同士がコンパクトに並んで座るのは、会話がなくとも妙な連帯感があった。それにしても、おしぼりの温かさが染みる。

ちょい飲みにぴったりのハーフサイズ Photo by よだ なお

ノーマルサイズは20個。2人分とされているが1人で食べる人も多いらしい。胃袋と相談し、ひとまずハーフサイズを注文しておく。

山女の円盤餃子はコロンとしたフォルムが特徴 Photo by よだ なお

山女の円盤餃子はコロコロとして丸っこい。プツプツと泡状の焼き目がついているのは、多めの油で揚げ焼きした証拠だ。外側はカリッカリで、耳の部分に至っては薄焼き煎餅のようなのに、内側にはしっかりモチモチ感が残る。

カリッと食感の中身は… Photo by よだ なお

中の餡は野菜多めで見た目よりずっとあっさりだから10個なんて一瞬だった。空になった皿は東北の木枯らしが吹いているみたいに寂しげに見える。

円盤餃子は戦後人々が生計を立てるために生まれ、日本の風景が変わっても形を変えていない。もしかしたら、あまりにおいしすぎて、変わる前に皿の上から姿を消してしまうのかもしれない。そう思ったとき、2つ隣の席に座る女性の声がした。

「やっぱり10個追加でお願いします」

ほら、やっぱり。

施設詳細

店名 餃子の店 山女
住所 福島県福島市早稲町5-23
アクセス JR 福島駅より徒歩6分
営業時間 平日  17:30~21:30
土曜  17:00~21:30
餃子が無くなり次第終了
日・祝定休/その他不定休あり
駐車場 近隣に提携駐車場あり
備考 ふくしま餃子の会HP

案内人

よだ なお

郷土料理(ふるさとごはん)コーディネーター」として、いつものごはんやおやつに日本各地の郷土料理を作って暮らしています。旅という名の、郷土料理&ご当地グルメ調査に出かけるのがライフワーク。調査と試作を経た郷土料理のレシピを、エッセイとともにInstagramで発信中です。本を出すのが夢。

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