名スポットは迂回した先に。

【忘れられないふるさとの味#15】勝ちゃんの塩焼きそば(石川県小松市 / JR小松駅)

郷土料理やご当地グルメには、土地に根ざした物語と“ふるさとの味”が詰まっています。

忘れられないふるさとの味」シリーズでは、各地の発祥店や地元の名店を訪ね、懐かしさと旅情に包まれる料理を紹介します。

勝ちゃんの塩焼きそば

石川県小松市——北陸新幹線の小松駅や空港も有する交通の要所であり、日本海に面するだけでなく日本三霊山の一つ「白山」を望む自然豊かな町。加賀藩ともゆかりが深く、小松製作所もあることでも有名であり、交通・自然・産業・歴史とさまざまな魅力のあるこの街は、小松うどんや地酒など外せない地域グルメも多い。

塩焼きそば

小松のソウルフード「塩焼きそば」 Photo by よだ なお

塩焼きそば自体は他にもあるが、「小松の塩焼きそば」は基本的には地元の食材を使い、もやしのシャキシャキ感を残すのがポイント。味付けは塩ベースだが、香づけや隠し味に醤油を使うことがある。特徴的な黄色い太麺は地元製麺所と開発したもので、もちもちとした食感は一度味わったら忘れられない。

餃子菜館 勝ちゃん

建物は比較的新しいが、1961年創業の老舗 Photo by よだ なお

小松駅から歩いてもほど近い「餃子菜館 勝ちゃん」は、60年以上前から愛されるご当地グルメ「塩焼きそば」の名店としてその名を轟かせている。

待合所には思い出の写真が並ぶ Photo by よだ なお

そもそも「塩焼きそば」は、たった一人の料理人から始まった。
東京・新宿歌舞伎町の中華店で「炒飯」ならぬ「炒麺(チャーメン)」に出会った高輪清(たかなわ きよし)さんは、その味に惹かれて修行を積んだのち、北陸へ戻って屋台を開いた。その後、中華料理店「清ちゃん」を開業。「塩焼きそば」は創業時からの看板メニューで、弟子達に受け継がれていつしか地元の名物になった。

広くて大きな厨房の料理人達がそれぞれの仕事に打ち込む Photo by よだ なお

今回訪れた「勝ちゃん」は、清さんの弟さんが開いた店。数年前に惜しまれながら幕を閉じた「清ちゃん」の味を受け継いだ店の一つだ。広くて大きなオープンキッチンでは、多くの料理人が腕を振るっている。

名物の塩焼きそばと餃子の組み合わせは間違いなし Photo by よだ なお

目の前に差し出された一皿から胡麻油の香りがふわりと立ちのぼる。太麺は油をまとってツヤツヤと黄金色に輝き、その一口がちゅるんと喉をすべる。あっさりとした塩味なのに、噛むほどに深まる旨み。それを最大限に引き出すには、細麺は力不足だろう。やはりこのもちもちの太麺しかない。これは食べた者だけがわかる“真理”だ。
シャキシャキのもやし、甘みを引き出されたにんじん、しんなりと炒められた白菜、ねぎ。そして焼きそばと相性抜群の豚肉。これは……うまい。

小松の塩焼きそば特徴の太麺がに具材がよく絡む Photo by よだ なお

ああ…昼からビールが欲しい。でも、車で来てしまった。なんで電車にしなかったんだろう。塩焼きそばに涙の塩気が追加されそうだ。
新幹線が停まる小松駅はこの店の目と鼻の先ーーそうだ!次に来るときは、車なんて家に置いてけぼりだ。餃子と塩焼きそばをつまみに、昼から一杯。そんな贅沢を、この町で味わいたい。

施設詳細

店名 餃子菜館 勝ちゃん
住所 石川県小松市土居原町395
アクセス 小松駅より徒歩4分
営業時間 11:00~14:00 (Lo13:30)
17:00〜21:00 (Lo20:30)
水曜定休
駐車場 大型あり
備考 公式HP
公式Instagram

案内人

よだ なお

郷土料理(ふるさとごはん)コーディネーター」として、いつものごはんやおやつに日本各地の郷土料理を作って暮らしています。旅という名の、郷土料理&ご当地グルメ調査に出かけるのがライフワーク。調査と試作を経た郷土料理のレシピを、エッセイとともにInstagramで発信中です。本を出すのが夢。

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