名スポットは迂回した先に。

【忘れられないふるさとの味#13】重松飯店の焼豚玉子飯(愛媛県今治市 / JR今治駅)

郷土料理やご当地グルメには、土地に根ざした物語と“ふるさとの味”が詰まっています。

忘れられないふるさとの味」シリーズでは、各地の発祥店や地元の名店を訪ね、懐かしさと旅情に包まれる料理を紹介します。

重松飯店の焼豚玉子飯

瀬戸内海に面した街、今治。

特産品のタオルや豊富な海産物などの見所の多いこの街で、話題のご当地グルメを探した。

焼豚玉子飯

愛媛今治のソウルフード「焼豚玉子飯」 Photo by よだ なお

愛媛県今治市の名物グルメ「焼豚玉子飯」。ご飯の上に薄切りの焼き豚と目玉焼きをのせ、甘辛い醤油タレをかける。B−1グランプリでの優勝をはじめ、グルメイベントでの入賞は数えきれない。

重松飯店

行列覚悟必須の盛況ぶり Photo by よだ なお

訪れたのが週末ということもあるが、ここに来るなら行列は覚悟しなければならない。汗ばむ陽気の中、お腹もペコペコ状態なのに、それでも並ぶ。重松飯店の「焼豚卵飯」にはそれほどまでに人を惹きつける「引力」がある。

遊び心あふれる立て看板もどこか懐かしい Photo by よだ なお

とはいえ回転が早く、見た目ほどには待たない。赤と黄色の「ザ・町中華」な外観や、遊び心のある立て看板を眺めていたら、待つのも楽しい。

厨房から聞こえてくる料理を作る音がこの店のBGM Photo by よだ なお

焼豚玉子飯は、今はなき中華料理店「五番閣」で賄いとして出されていたものを、そこで修行した料理人が独立して、それぞれの店で出すようになった。「重松飯店」も味を受け継いだ店の一つ。注文がひっきりなしだから、厨房からの美味しい音が止むことはない。

これで小盛というのが信じられないボリューム Photo by よだ なお

オレンジかかってハリのある半熟卵はトゥルンと光を跳ね返している。輝く黄身に容赦無くれんげを突き立て、豪快に混ぜていく。弾けてトロリと溶け出して、全体が黄色く染まっていった。

30年以上継ぎ足してきた特製タレには、豚のエキスが溶け込んでいるらしい。単純に調味料を混ぜただけでは出ない奥行きのようなものを確かに感じる。甘いが、どこか控えめで上品だ。あえて例えるならウナギのタレに近いかもしれない。

れんげで混ぜて、卵と焼き豚とごはんを一緒に Photo by よだ なお

黄身の味わいは濃厚で、タレに全く負けていない。そこに薄切りの焼豚がジューシーな旨みをプラスする。焼豚はバラ肉ともも肉の2種類を使用しているらしい。肉質を変えて旨味の緩急をつけるなんて、本当に憎らしい。いや、肉らしい。

一度食べれば、ほとんどの客が並盛でなく中盛を頼む理由がわかる。「並」じゃご飯が足りない。メニューに書いてあった大盛(ごはん550g)も冗談だと思ったけど、これは本気だ。間違いない。

施設詳細

店名 重松飯店
住所 愛媛県今治市大正町5丁目-4-47
アクセス 今治駅より 徒歩15分
営業時間 11:45~13:45
18:00~20:00(夜営業は火・土・日のみ)
月曜定休
駐車場 あり
備考 予約不可

案内人

よだ なお

郷土料理(ふるさとごはん)コーディネーター」として、いつものごはんやおやつに日本各地の郷土料理を作って暮らしています。旅という名の、郷土料理&ご当地グルメ調査に出かけるのがライフワーク。調査と試作を経た郷土料理のレシピを、エッセイとともにInstagramで発信中です。本を出すのが夢。

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