名スポットは迂回した先に。

【忘れられないふるさとの味#11】杉の子の鶏ちゃん(岐阜県下呂市 / JR下呂駅)

郷土料理やご当地グルメには、土地に根ざした物語と“ふるさとの味”が詰まっています。

忘れられないふるさとの味」シリーズでは、各地の発祥店や地元の名店を訪ね、懐かしさと旅情に包まれる料理を紹介します。

杉の子の鶏ちゃん

下呂駅を降りたら温泉街はすぐそこだ。街の中心を流れる飛騨川の、サワサワという水音が辺りに響いて心地いい。すぐにでも温泉へ浸かりたいところを我慢して、車を5分ほど走らせたところに「杉の子」はある。地元住民の日常が流れるエリアの一角だ。

下呂温泉街を流れる飛騨川 Photo by よだ なお

3つの排気口からは、鶏肉とニンニクが焼けるなんとも言えない香ばしい匂いが漏れ出している。入り口を開けるとさらにその香りが濃くなって、少しの待ち時間も拷問に近い。

地元民から海外の観光客にまで愛される鶏ちゃん専門店「杉の子」 Photo by よだ なお

鶏ちゃん(けいちゃん)」はタレに漬け込んだ鶏肉とキャベツを焼く岐阜の郷土料理で、下呂市が本場。中でも「杉の子」は、熱烈な支持を集める有名店だ。

この店は岐阜のブランド鶏「恵那鶏」を使うのがこだわり Photo by よだ なお

ジンギスカン鍋に乗った「鶏ちゃん」は、具材を右へ左へと滑らすように絶えず混ぜながら焼くのがコツ。次第にタレが香ばしいニンニクの香りを漂わせ、キャベツはくったり、鶏肉はプリプリと引き締まっていく。ここまできたら「いただきます」は後少し。

ジンギスカン鍋で香ばしく焼き上がる鶏ちゃん Photo by よだ なお

火が通れば「鶏ちゃん」の出来上がり。ニンニク醤油系の秘伝のタレとご飯の相性は言わずもがなで、鶏肉は弾けそうなほどの弾力がある。噛むと鶏の脂が口の中をとろりと包むが、ギトギト感は全くなく、旨みを出しつつするりと喉を滑り降りた。

〆の鶏ちゃん焼きそばは、この店の名物 Photo by よだ なお

半分まで食べたところで名物の焼きそばを追加する。パステルイエローだった麺がタレと絡んでセピア色になったら、それが食べ頃の合図。

育ち盛りの勢いでペロリと平らげたら、待ってましたとばかりに店員さんから「麺の追加はいかがですか?」の一言。このタイムリーな申し出を断れる人はそうはいないだろう。もちろんわたしの答えも「お願いします」で決まりだ。

施設詳細

店名 鶏ちゃん 杉の子
住所 岐阜県下呂市小川1311-1
アクセス 下呂駅より 車で5分
営業時間 11:00~15:00
月曜定休
駐車場 あり(10台)
備考 公式HP

案内人

よだ なお

郷土料理(ふるさとごはん)コーディネーター」として、いつものごはんやおやつに日本各地の郷土料理を作って暮らしています。旅という名の、郷土料理&ご当地グルメ調査に出かけるのがライフワーク。調査と試作を経た郷土料理のレシピを、エッセイとともにInstagramで発信中です。本を出すのが夢。

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