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【古民家カフェ#11】Cafe閑居(埼玉県行田市/ 行田市駅)【古民家カフェ】

その土地の人々に受け継がれてきた郷土料理やご当地グルメの発祥店や名店を紹介する「忘れられないふるさとの味」。
誰にとってもどこか懐かしく、ふと思い出しては無性に食べたくなる「ふるさとの味」は、旅に情緒をかき立てるもの。
郷土料理やご当地グルメを味わいつつ、その土地の記憶や物語に想いを馳せてみては?
埼玉県行田(ぎょうだ)市の忍城(おしじょう)の天守閣を見上げた。映画「のぼうの城」の舞台である城だ。幾度となく攻められながらも一度も落城したことがないドラマチックな歴史をもつが、現在は公園として整備されて住宅街と隣り合わせの不思議な光景が広がっている。
映画化された小説「のぼうの城」の舞台である忍城(おしじょう) Photo by よだ なお
忍城から住宅街へと歩みを進めてタイムスリップする感覚に身を任せていると、お目当ての「かねつき堂」が見えてきた。店先には忍城の鐘楼が移築され、店名にも受け継がれている。架けられていた鐘は博物館へ行ってしまったが、その代わりにベンチやガチャガチャが置かれて、憩いのスペースになった。
かねつき堂の外観 Photo by よだ なお
のれんをくぐると、エプロン三角巾姿のお母さん達が出迎えてくれる。とにかくまずは注文と会計だ。行田名物の「フライ」と「ゼリーフライ」の両方を頼む。2つでたったの620円(2024年11月訪問時)。一桁忘れているんじゃないかと心配になる程安い。
実家に帰ってきたような懐かしい雰囲気の小上がり席 Photo by よだ なお
靴を脱いで飛び込んだ小上がり席は実家に帰ってきたような雰囲気。手書きメニューやかき氷の垂れ幕がお祭りを連想させて、ワクワクした気持ちをかき立てる。
行田市の名物「フライ」(奥)と「ゼリーフライ」(手前) Photo by よだ なお
揚げていない「フライ」に、揚げ物だがデザートとは無関係の「ゼリーフライ」。チグハグな名前は何度聞いても慣れないし、面白い。
外はカリカリで中は滑らかなかねつき堂自慢のゼリーフライ Photo by よだ なお
「ゼリーフライ」は「銭富来」がなまったもので、小判型をしている。コロッケに似ているが、中はじゃがいもだけでなく、「おから」が入っているのが特徴。一口食べると、外側の衣がサクリッと大きな音を立てた。衣に染み込んだソースの濃厚な味が広がって、唾液腺を容赦なく刺激してくる。外側は食感も味もインパクトが強いが、強すぎる後味は内側の滑らかな生地が受け止めて包み込んでしまう。内と外の絶妙なコンビネーションに、ここが人気である理由が見えた気がした。
お皿からはみ出さんばかりのフライ小サイズ Photo by よだ なお
次は「フライ」。ここ行田は足袋(たび)作りで栄えた街で、布を扱うから「布来(フライ)」とも、「富よ来い」の語呂合わせで「富来(フライ)」とも言われる。小麦粉を水で溶いたものに具を入れて焼いたものだが、薄いのにかなり食べ応えがあり、昔は足袋工場の女工さん達に大人気だったらしい。
弾力ある生地に隠れる青ネギのシャキシャキ食感がアクセント Photo by よだ なお
箸を入れるとむちゅりむちゅりと音をたて、わずか2mmの薄さなのに、圧倒的な弾力で魅了する。もちもちした食感に、たまにネギのシャキシャキが混じるのがいいアクセントだ。もちもちシャキシャキの食感に気を取られていると不意に豚肉の旨みが飛び込み、ジュワリとした豚の旨みが加わって最高に美味しい。豚肉という隠れアイテムには、舌が驚きつつも大喜びだ。
2つを食べ終わる頃にはお腹はパンパンだった。女工さん達の間で「安くて腹持ちがいい」と言われていたというが、納得だ。実はあわよくば他のお店とも食べ比べたいと思っていたが、胃袋からNoを突きつけられた。仕方がない、食べ比べは次回に持ち越しだ。また行田に来る理由が増えたなと思いつつ、口の端についたソースをぬぐう。行田には古墳群や足袋蔵もあるし、楽しみは尽きない。どうやらこの街とは長い付き合いになりそうだ。
施設詳細
店名 | お休み処 かねつき堂 |
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住所 | 埼玉県行田市本丸13-13 |
アクセス | 秩父線 行田市駅下車 徒歩12分 |
営業時間 | 11:00~17:00 月曜・第3火曜定休(祝日の場合は営業) |
駐車場 | あり(23台) |
備考 | 公式HP |
よだ なお
「郷土料理(ふるさとごはん)の暮らしすと。」として、いつものごはんやおやつに日本各地の郷土料理を作って暮らしています。旅という名の、郷土料理&ご当地グルメ調査に出かけるのがライフワーク。調査と試作を経た郷土料理のレシピを、エッセイとともにInstagramで発信中です。本を出すのが夢。
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