名スポットは迂回した先に。

【忘れられないふるさとの味 #4】翼果楼の焼きさば素麺(滋賀県長浜市 / JR長浜駅)

郷土料理やご当地グルメには、土地に根ざした物語と“ふるさとの味”が詰まっています。

忘れられないふるさとの味」シリーズでは、各地の発祥店や地元の名店を訪ね、懐かしさと旅情に包まれる料理を紹介します。

翼果楼の焼きさば素麺

滋賀県の長浜は、豊臣秀吉が作った城下町だ。2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」の舞台とであり、例年以上の盛り上がりを見せている。江戸や明治の建物が今も数多く残るこの街角には、昔から行列の絶えぬ店がある。この辺りの郷土料理である「焼きさば素麺」の名店「翼果楼(よかろう)」だ。

外観 photo by よだ なお

古い瓦の上に乗るはガラス製のモダンな看板。ガラスの街でもある長浜らしさが随所に見られるのは、旅する者の心を躍らせる。

ハイカラな照明や海外のアンティーク家具が日本的な内装に馴染む photo by よだ なお

太い梁にはハイカラな照明が灯る。ギシギシと歌うすすけた色の階段を上れば、海外のアンティークな椅子が最初からあるみたいな顔して馴染んでいた。

庭の見えるガラス窓 photo by よだ なお

窓の格子に障子の名残を感じる。ガラス越しの庭の緑を眺めながら「焼きさば素麺」を待つ。そうめんだから、それほど待たずに届くだろう。「焼きさば」は元々、嫁いだ娘へ両親から送られるものだった。農繁期で家事に仕事に忙しい時期、手軽に食べられる「焼きさば」を使った素麺は重宝されたらしい。

長浜に古くから伝わる焼きさばそうめん photo by よだ なお

煮汁を吸ってセピア色に染まった素麺に山椒の葉の緑が清々しい。骨までほろほろになる程じっくりと煮込んださば。ギリギリ形を留めているそれは、噛めば噛むほどジュワリと鯖の旨みが出てくる。ツルツルと小気味よく吸い込んだ素麺と共に飲み込めば、入れ替わりに満足のため息が漏れた。

ゆず七味と山椒で味を変えながら photo by よだ なお

ふと卓上の「ゆず七味」と「山椒」が目に止まる。ここらで味変といこうか。ゆずと山椒それぞれの風味が加わって、素朴な焼きさばが一気に粋な装いになる。鼻に抜けるゆずの香り、山椒のほろ苦さ…甲乙つける前に食べ終わる。この勝負をつけるためにもまた、ここに通わなければならないようだ。

施設詳細

喫茶名 翼果楼 (よかろう)
住所 滋賀県長浜市元浜町7-8
アクセス JR長浜駅下車 徒歩4分
営業時間 10:30~15:30(月曜定休)
※月曜が祝日の場合は営業
駐車場 なし(周辺に有料Pあり)
備考 公式Instagram
公式X(旧Twitter)

案内人

よだ なお

郷土料理(ふるさとごはん)の暮らしすと。」として、いつものごはんやおやつに日本各地の郷土料理を作って暮らしています。旅という名の、郷土料理&ご当地グルメ調査に出かけるのがライフワーク。調査と試作を経た郷土料理のレシピを、エッセイとともにInstagramで発信中です。本を出すのが夢。

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