訪れておくべき名建築を紹介する企画「#名建築の旅」。
建築家の情報や見るべきポイント、楽しみ方も紹介していく。
北海道旭川市の中心にある、内藤廣氏とJR北海道、日本交通技術が設計したJR旭川駅。内藤氏はその後「JR高知駅」、「JR日向駅」、「みなとみらい線馬車道駅」と駅舎建築を多く生み出すことになる。
ガラス張りのファサードからは自然光がふんだんに取り込まれ、内を明るく保つことができる。また、天井の高さやガラスの透明感が開放感を与える。また、南口では駅前にある「忠別川」との親和性を重視した造りとなっている。
ガラス張りの外観とは異なり、内部は北海道産のタモ材をふんだんに使用した温かみのある空間となっている。このような木を用いた空間づくりは内藤氏の生み出す建築の特徴のひとつだ。
全長180m、幅60mの平行弦トラスの大屋根によって全体が覆われており、広い駅ホームの空間を支えている。
4本に枝分かれしたピン構造の鉄骨柱である「四叉柱(よんさちゅう)」も特徴的である。白い塗装を施すことで、雪の積もった樹木のようであり、鉄骨を用いた空間ながら、並木道のような柔らかい印象を与えている。
また、一般公募で募った1万人の名前を刻印した壁面も存在する。街のシンボルとなるような壮大な駅舎、内部の温かみのある空間に加えて名前の刻印や、街のPRのコーナーがあるなどユーモアのある試みの効果もあり、市民が親しみ深い建築になっている。
建築情報
建築名 | JR旭川駅 |
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設計者 | 内藤廣 |
竣工年 | 2012年 |
住所 | 北海道旭川市宮下通8-3 |
内藤廣
1950年神奈川県生まれ。吉阪隆正に師事し、菊竹清訓建築設計事務所などを経て1981年に内藤廣建築設計事務所を設立。「海の博物館」で建築学会賞、「牧野富太郎記念館」で村野藤吾賞などを受賞している。東京大学名誉教授。
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