近年、新しいアートの聖地として注目されている青森県。地元出身の名高い芸術家や、行政の取組み、名建築の誕生等によって2000年以降に芸術文化が急速に醸成された。中でも県内に建てられた美術館の多くは建築界でも有名な名建築ぞろいであり、聖地巡礼コースとなっている。
本記事では青森出身の建築家であり、建築巡りマニアでもある木村才人さんに、青森県のおすすめ美術館を6つ紹介してもらった。
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1.国際芸術センター青森ACAC(Googleマップでみる)
八甲田山の麓、森林の中に隠れるように建つ国際芸術センター青森は著名な建築家・安藤忠雄氏の設計によるものだ。
この施設は一般の美術館とは違い、作家がこの地に滞在し、創作を行うアーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)を行うこと目的とした施設である。宿泊棟、創作棟、展示棟の3つの建物に分かれ、敷地内には作家が制作した野外作品が点在している。
建物へのアプローチとなる四季のアーケードは季節によってさまざまな表情を魅せ、水盤上の円形野外ステージやギャラリーは、安藤忠雄の幾何学や陰影に対する洗練された美意識を高く感じさせる。
青森の自然の豊かさや厳しさと、それに対する建築や芸術作品の美しさにここで触れてほしい。(木村才人)
2.青森県立美術館(Googleマップでみる)
10年以上もの構想年月が費やされ、実施された美術館の設計者を決めるための大規模な設計コンペには、全国から393もの設計案が応募された。歴史に残るコンペを制したのは建築家・青木淳氏の設計案であった。
氏の設計案は隣接する縄文時代の遺跡、三内丸山遺跡の発掘跡から着想を得たものでだった。平面的にも、立体的にも複雑な構造を持ったこの建物、迷路のように入り組んだ美術館をさまようのは、まるで大きな街を探検しているかのようで、角を曲がったときにどんな作品との出会いがあるのかワクワクする。
マルク・シャガール、アレコの舞台絵や奈良美智のあおもり犬などアイコニックで可愛らしい作品に会いに行ってみてはいかがだろうか。(木村才人)
3.十和田市現代美術館(Googleマップでみる)
当時、新進気鋭の若手建築家ばかりを集めて行われた十和田市現代美術館の指名設計コンペを勝ち抜いたのは、後に建築会のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を建築家ユニットSANAAとして獲得した一人、建築家・西沢立衛氏であった。
街のメインストリートに突然現れる白い箱の集合体は、ひとつひとつがアート作品の家であり、美術館自体が小さな街の様に見える。近年では塩田千春やレアンドロ・エルリッヒ、名和晃平などの作品も加わり、常設展示がメインの美術館でありながらも、なんどでも訪れる価値のある美術館でもある。
草間彌生の作品が展示されている美術館前のアート広場や現代アートチーム目[mé]が手掛けたサテライト施設「space」に訪れることもお忘れなく。(木村才人)
4.弘前れんが倉庫美術館(Googleマップでみる)
5.八戸市美術館(Googleマップでみる)
県内で一番新しい美術館として2021年八戸市にオープンした美術館。この美術館の最大の特徴はジャイアントルームと呼ばれる巨大なパブリックスペースである。あるときは展示スペースとして、あるときはイベントスペースとしてさまざまな活動を展開できる懐の深い空間を持った全く新しい形の美術館と言える。
実際にこのスペースを使用して、バスケットボールの試合が行われたこともあるそうだ。普段このスペースは入館料なしで入ることができ、僕が訪れたときも近所の学生が自習をしたり、近所のおばちゃんたちがおしゃべりをしていた。まさにまちなかの広場のような美術館である。(木村才人)
6.三沢市寺山修司記念館(Googleマップでみる)
番外編として青森県三沢市出身の歌人・劇作家である寺山修司の記念館を紹介したい。青森の広大な自然の中にぽつんと立っているこの記念館は、外観からして異様な雰囲気を醸し出している。
半面ピエロ半面本棚のオブジェや壁中につけられた陶板画、口ひげがついた真っ赤な扉などがあり正直入りづらい。中に入るとさらにカオスな世界が待ち受けている。
公立の記念館とは思えないような攻めた展示内容。
一緒に行っても気まずくならない人を連れて、ぜひディープなテラヤマワールドを堪能してほしい。(木村才人)
青森の美術館を回るときは、この記事をハンドブック代わりに、アートと建築をセットでお楽しみあれ!月曜日は休館日の美術館も多いので、事前に要チェック✔️
木村 才人/ KIMURA Saito
林檎と建築とアート。愛と平和とロックンロール。