名スポットは迂回した先に。

【忘れられないふるさとの味 #1】玉泉亭のサンマーメン(神奈川県横浜市/伊勢佐木長者町駅)

その土地の人々に受け継がれてきた郷土料理やご当地グルメの発祥店や名店を紹介する「忘れられないふるさとの味」。

誰にとってもどこか懐かしく、ふと思い出しては無性に食べたくなる「ふるさとの味」は、旅に情緒をかき立てるもの。

郷土料理やご当地グルメを味わいつつ、その土地の記憶や物語に想いを馳せてみては?

 

玉泉亭のサンマーメン

古くからの繁華街である伊勢崎町。横浜スタジアムに程近いこのエリアには、開港や戦後の復興などの歴史の波に揉まれた横浜の歴史の匂いが今も漂う。その一角にある「玉泉亭」は、横浜のご当地グルメである「サンマーメン」発祥の店だ。

外観 photo by よだ なお

これぞ王道の町中華と言える外観。大正時代に創業し、初めはこの近くに店を構えたものの、戦後にここへ移転した。もうすぐ創業100年を迎えようという老舗だ。

店内の様子 photo by よだ なお

年季の入った赤いテーブルや渦巻き模様の椅子。何年も何十年も、多くのお客さんを迎えてきたからこその色合いに心を掴まれる。

次々の入る注文に、厨房の奥は常に赤い火が揺らいでいる。餃子の注文が入るたびに白い煙とジュワーっという音が吹き出し、店内は喝采に包まれるライブ会場のようだ。

サンマーメン photo by よだ なお

サンマーメンは「あんかけラーメン」と説明されるが、似ているようで若干違う。秋刀魚も不使用だ。

あんのとろみはほぼなく、さらりと喉を潤す。見た目よりずっとあっさりした味だ。スープに合うように計算された細麺の上には、シャキシャキ野菜がたっぷりのっている。「サンマー」とは「シャキシャキした野菜」という意味らしい。

麺を食べ終わってもスープをすくうレンゲは止まる気配がない。小さいもやしすら、残さず食べたいのだ。ふと見ると、れんげの中に小さな豚肉が浮かんでいる。食べ終わろうとするタイミングでの予想外のご褒美。少し筋の残る豚肉を噛みしめ、ようやくれんげを置いた。美味しかった。それ以上の言葉は見当たらない。

また必ず来よう。夜の横浜、玉泉亭。

 

施設詳細

喫茶名 玉泉亭
住所  神奈川県横浜市中区伊勢佐木町5丁目128
アクセス 地下鉄 伊勢崎長者町駅下車 徒歩約9分
京急 日ノ出町駅下車 徒歩12分
JR 関内駅下車 徒歩13分
営業時間 11:00~21:00 Lo20:30(火曜定休/祝日の場合は営業)
駐車場 無し (近くにコインパーキング有り)
備考 支店の玉泉亭横浜ポルタ店(横浜駅直結)あり
公式X(旧Twitter)

 

案内人

よだ なお

郷土料理(ふるさとごはん)の暮らしすと。」として、いつものごはんやおやつに日本各地の郷土料理を作って暮らしています。旅という名の、郷土料理&ご当地グルメ調査に出かけるのがライフワーク。調査と試作を経た郷土料理のレシピを、エッセイとともにInstagramで発信中です。本を出すのが夢。

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忘れられないふるさとの味

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