コールテン鋼とは、別名「耐候性鋼板」と呼ばれ、表面が錆びることで内部の腐食を防ぐ耐候性に優れた特殊な鋼材のことである。その機能性もさることながら、やはり最大の魅力はその表面の錆が作り出す表情にある。月日を経て黄土色の錆から落ち着きのある黒褐色の錆に変化していく。本記事ではコールテン鋼が使われている建築ばかりを集めた「コールテン鋼建築MAP」の中から、特におすすめの名建築を、6つ抜粋して紹介する。
1.「森の学校」キョロロ(Googleマップで見る)
新潟県十日町市にある「森の学校」キョロロは「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」に伴い2003年に開館した博物館、兼研究施設である。手塚貴晴+手塚由比両氏の設計による、全長160メートル、重さ2000トンのコールテン鋼建築である。積雪量の多いこの地で、雪の重みや水分による腐食に耐えられるように耐候性の高いコールテン鋼が採用されている。展望台のある塔の高さは12階建てのビルに匹敵し、鉄の伸縮によって夏と冬では高さが20センチもちがうのだとか。
2.ポチョムキン(Googleマップで見る)
「森の学校」キョロロと同じく、新潟県十日町市にあるポチョムキンは、世界最大の国際芸術祭である「大地の芸術祭」というアートプロジェクトの一環で建てられた建築のような彫刻作品である。フィンランドの設計事務所であるカサグランデ&リンターラ建築事務所によって設計され、2003年に竣工した。自然の中に敷かれた白い玉砂利の上に、力強いコールテン鋼の壁で曖昧な空間が構成されている。もともとは釜川の土手のゴミが不法投棄されていた場所であり、作者は「文化的なゴミ捨て場」と呼んでいる。
3.小田原文化財団 江之浦測候所(Googleマップで見る)
神奈川県小田原市にある江之浦測候所(えのうらそっこうじょ)は、写真家で現代美術作家の杉本博司氏により、構想に10年、工事に10年を経て2017年に完成した。ギャラリーや茶室等の機能もあるが、主にアートの紀元に立ち戻り、自然や自己と対話する場所として設計された。未来の遺跡、廃墟となっても美しい建築になるべく、経年変化の美しい素材が多用されている。相模湾へとせり出した全長70メートルの冬至光測候トンネルは、長さ6メートルのコールテン鋼をつないで押し出す工程を繰り返すことによって完成した。冬至には、この軸上の海面に日が昇り、朝日がまっすぐトンネルを貫くという。
4.福良港津波津波防災ステーション(Googleマップで見る)
兵庫県南あわじ市にある福良港津波防災ステーションは、建築家の遠藤秀平氏が設計して2010年に完成した津波対策のための施設。渦を巻いた動的な形が特徴的で、「うずまる」の愛称で親しまれている。津波の影響を受けにくいように1階はピロティとなっていて、海の近くでも腐食しにくいコールテン鋼が採用されている。
5.菅野美術館(Googleマップで見る)
宮城県塩竈市にある菅野美術館は、10m×12m×10mのヴォリュームで構成された小さな美術館である。設計は阿部仁史氏で2006年に竣工した。外壁のコールテン鋼に施された凹凸のあるエンボス加工は、鉄板の強度を上げるために施された構造的な要素であり、同時にこの美術館をアイコニックなものにしている。
6.金沢市立玉川図書館(Googleマップで見る)
石川県金沢市にある金沢市立玉川図書館。谷口吉生による設計で、総合監修はその父である谷口吉郎氏によるもので、谷口親子唯一の共同作品である。1978年に竣工しており、今回紹介する建築の中では最も古いコールテン鋼建築で、写真でも分かるように40年以上の経年変化によって赤みが落ち着き、深みのある表情を見せている。金沢の中心に位置する
本記事では主に建築家によるコールテン鋼の採用事例を紹介したが、もともとはその耐候性の高さから定期的なメンテナンスが困難な神社仏閣や鉄橋などで採用される場合が多い。実は注意深く目を向けてみたら身近な場所にも使われているかも、、!
建築家と一緒に金物をつくる鉄工職人。
HP:十てつ
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