タブレットの台頭により、ペーパーレスの動きが盛んになってきた。しかし、「本を手に取り読書する」という、利便性だけでは測れない魅力も確かに存在する。
本記事では本屋さんに赴き、紙の本を探す楽しさを、具体的な休日の過ごし方とともにいぶさんに紹介してもらった。
無類の“本屋好き”であるいぶさんは、本屋さんに足を運ぶこと自体が旅行のようなものだという。その日の気分に合った本屋さんを中心に「ついでにあのパン屋さんにも行ってみようかな」などと考える時間もわくわくするのだとか。
また、本屋さんに行くことは、利便性にはない価値があるのだという。
大きい書店や通販サイトなどは、カテゴリや名前順に並んでおり「見つけやすい」仕様になっている。一方で今回紹介するような小さい本屋では、店主が作家の想いを汲み取り、それに合わせた陳列や紹介をしてくれることで「出会いやすい」仕様になっているのだ。
いぶさんの出身地・福岡にあるおすすめ本屋さんを「どのような出会いがあるか」「その本屋さんをより楽しめるルート」とともに5つ紹介する。
📚:この書店で素敵な出会いをした本のカテゴリ・ジャンル
🐾:この書店をより楽しめる移動ルート
1.ブックスキューブリック 箱崎店(Googleマップはこちら)
福岡県箱崎市、箱崎駅前にあるブックスキューブリック 箱崎店は、約20坪の空間の中に様々なジャンルの本がぎっしり詰まった小さな書店だ。本だけでなく雑貨や食品にも力を入れている。
いぶさんは、置かれた一つひとつの選書が絶妙だという。暮らしを見直したいときに訪れると、必ずヒントが見つかる本と出会えるのだとか。
ひとしきり本を探したあとは、2Fのギャラリーでニッチな作家さんの展示を楽しみつつ、カフェキュービックでので腹ごしらえ。
箱崎は、古い建物や商店と若い人たちがはじめた新しいお店が交わった面白みのある街であり、ぜひ訪れた際には近くを散策して楽しんでみてほしい。
📚:物語、ライフスタイル、雑貨(本ではないが)
🐾:筥崎宮でお参り→ナガタパンで遅めのランチ→ブックスキューブリック 箱崎店で本や雑貨を楽しみ、2Fでギャラリー鑑賞後におやつを食べる
2.六本松 蔦屋書店(Googleマップはこちら)
福岡県福岡市、六本松駅前にある六本松 蔦屋書店では、多種多様な本、音楽と映画を取り揃え、日々のくらしを豊かにする時間と空間を提供している。おしゃれな内装であり、スターバックスも併設されていることからとにかく居心地が良い点がポイントだ。
今回紹介する中でここは唯一の大型書店だが、ここでは他の店舗とまた異なった楽しみ方があるそうだ。
建築デザイナーであるいぶさんは、アイデアや発見を求めて訪れることが多い。デザイン関連の本棚沿いの壁は小さいギャラリーになっており、出会いに溢れている。暮らし関連の本棚の周りには雑貨コーナーなどもあり、本を探すと同時にアイテムとも出会えることがお気に入りなんだとか。
また、本棚を眺めるうちに思いついたアイデアは、すぐさまスターバックスの座席で書き留められる。クリエイティブな仕事をする人にとってはぴったりの場所だ。
また、「合わせて訪れてほしい!」とおすすめするのがマツパンだ。
古民家を改修した二階建てのこぢんまりしたパン屋さんであり、2Fには畳のイートインスペースも。ゆっくりと時間が流れるような空間がたまらないのだという。
昼過ぎに起きた休日に、思う存分ゆったりできる最適なコースだ。
📚:デザイン、建築、雑誌、実用
🐾:六本松 蔦屋書店で本、アイテムと出会いを楽しみ、アイデアが生まれたらスターバックスで書き留める→マツパンで買った本を眺めながらパンを食べて過ごす
六本松 蔦屋書店
3.ナツメ書店 西戸崎店(Googleマップはこちら)
福岡県福岡市、西戸崎駅徒歩4分の場所にあるナツメ書店 / Sleep Coffee and Roaster。いぶさんは「まるで物語の一部のような世界観の中に佇む本屋さん」だという。
海沿いの街を車で走った先に見えてくるどこか懐かしい佇まい。書店であり焙煎所でもある店内は、いつでもぽかぽかとした空気と香ばしいコーヒーの香りが漂う。そんな中で心ゆくまで本を選ぶのが至福のひとときなのだとか。
その雰囲気はナツメ書店の オンライン通販やYoutube上でも感じ取ることができる。
また、いぶさんが店主さんにこっそり教えてもらった、読書に最適な秘密の海岸があるのだという。もし訪れた際には自分だけの読書スポットを開拓するのも一興だ。
近くにあるCanezees Doughnut(ケンジーズドーナツ)でドーナツを買い求め、海岸で本を読む。ナツメ書店を中心にして、なんとも優雅な休日を送れる。
静かに本を手にしに。
お好みのコーヒーを探しに。
頭をからっぽにして過ごしに。日常の延長にある、少しだけ特別な時間となりますように。
(ナツメ書店 HPより引用)
📚:小説、雑学、ライフスタイル、アート・詩
🐾:時間と心に余裕のある休日に、海沿いを通って向かう→ナツメ書店で本との出会いを楽しむ→ケンジーズドーナツでドーナツとコーヒーを買う→海辺で本を読む
ナツメ書店 古賀店
※西戸崎店は「2023.4.14」より改装のため長期休業中
4.LIBRIS KOBACO(Googleマップはこちら)
福岡県福岡市、大濠公園駅徒歩2分の場所にあるLIBRIS KOBACO(リブリスコバコ)は、ヴィンテージビルの一室にひっそりと存在する「本と写真」をコンセプトにしたブックストア&フォトギャラリー。ブックストアとフォトギャラリーを互い違いにオープンするスタイルでやっている一風変わったスポットだ。
ブックストアのときには
店主自らセレクトした写真集を中心としてオープンし、写真に関連した本にまつわるイベントも行います。フォトギャラリーのときには
写真を存分に見ていただきたいため展示のみのスタイルとしてオープンします。
写真家の方に在廊していただき、トークイベントなども開催いたします。
(LIBRIS KOBACO HPより引用)
いぶさんは「オーナーさんから色々なお話を聞きながら写真集を眺めるのが楽しくてスキ」だという。普段生活している中では出逢えないような写真や本を、ぐっと身近に感じられるあたたかい本屋さんだ。
また、近くにあるリンデカルトナージュもぜひ合わせて訪れてほしいという。
リンデカルトナージュは紙をこよなく愛する主がいる文具店。紙を選び手紙を書くという、丁寧で文化的な体験ができる。
紹介した2つのスポットからは、大濠公園内にある福岡市美術館も近い。本に写真にアートと、とことん文化的な休日を過ごすことができる。
📚:アート、写真
🐾:福岡市美術館・リンデカルトナージュも併せて訪れることで「文化的な休日」を過ごす
5.MINOU BOOKS(Googleマップはこちら)
福岡県うきは市、筑後吉井駅徒歩10分の場所ある本屋とカフェ、MINOU BOOKS(ミノウブックス)。衣食住といった生活周りの本からアートブックまで、「暮らしの本屋」をテーマにいつもの日常に彩りを加えるような本が取り揃えられている。
いぶさんは「うきはに行くなら絶対に訪れるべき本屋さん」と太鼓判を押す。淡いブルーのガラス戸をガラガラと開けると、本屋さんにもかかわらず焼き菓子の甘い香りが。しあわせな香りに包まれながら本棚を練り歩き、表紙を眺める…想像しただけでも幸せな情景が浮かんで来る。
うきは市は歴史ある街並みが特徴的な街だ。1996年に国の重要伝統的建造物群地区にも選定された。白壁の外壁の和菓子屋や雑貨屋などが並び、のんびり散策するのにおすすめのエリアだ。
📚:ライフスタイル、随筆、エッセイ
🐾:うきはの白壁の街並みを歩いて楽しむ(鏡田屋敷などに立ち寄る)→MINOU BOOKSにてゆっくり本を選び、小旅行の余韻に浸りながらコーヒーを飲んで一息
いぶさんは、紹介してもらった各スポットについて「普段本を読まない人でも楽しめる本屋さん」と話す。これらのスポットは、読書という一つのアクティビティだけでなく、書店の空間や店主さんとのコミュニケーション、陳列された本を美術館のように眺めるなど、いろんな角度から楽しめる「本屋さん」なのだ。
均一化された工業製品としての本を読むだけではない体験価値、幸せな休日がそこにある。ぜひこの週末、本屋への旅に出てみてはいかがだろうか。
福岡出身。現在は東京と宮崎、そして自作軽トラハウス“縁側トラック”の三拠点生活を送る空間デザイナー。休日には本屋巡りや建築探訪、カメラ、縁側ハウスでの小旅行などをおこない、丁寧な暮らしを体現している。
instagram:@fii2_