名スポットは迂回した先に。

【名建築の旅in北海道】大自然を包み込む設計美、北海道のおすすめ名建築

訪れておくべき名建築を紹介する企画「#名建築の旅」。

本記事では北海道にある建築スポットと、建築家の情報や見るべきポイント、楽しみ方も紹介する。

北海道の建築は、大自然の中でその美を際立たせるようなデザインが特徴。広大な風景を背景にした建物や、周囲の自然に溶け込むような名建築の数々を紹介する。

 

北海道の名建築紹介記事

#名建築の旅 一覧▶︎


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札幌市の名建築

札幌聖ミカエル教会

北海道に唯一現存するアントニン・レーモンド建築として知られる、札幌聖ミカエル教会

1960年に竣工し、翌年に和紙貼りのステンドグラスと家具を含めたすべてが完成しました。独特なファサードでありながら、静かな住宅地に溶け込むように佇んでいます。

教会ファサード

特徴的なファサード photo by いぶ

聖堂

聖堂から祭壇を望む photo by いぶ

聖堂

聖堂全体 photo by いぶ

レーモンドといえば、フランク・ロイド・ライトと共に帝国ホテル建築のために来日後、日本に留まり、多くの名建築を残した建築家です。

そんな彼がこの教会を設計、しかも無償で引き受けた背景には、当時教会の司祭に赴任したばかりだったベバリー・D・タッカー師の熱い想いがありました。

神の教会とは、神に捧げる最高のものを作り上げるべきです。

日本建築の最高のものがそうであるように、簡素だが美しく、費用のかからないが、しかし強固で永続的なものです。− ベバリー・D・タッカー

タッカー氏

1954〜1969年まで司祭を務めたベバリー・D・タッカー師 photo by いぶ

理想の教会を追い求めていたタッカー師は、東京にあるレーモンド設計の聖オルバン教会に魅了されます。その後、レーモンドの事務所にデザイナーである妻・ノエミ夫人と出向き直談判。当日、レーモンドは相槌もせず『考えてみる』とだけ言い放ったそうですが、その5ヶ月後、彼らの元に図面が届けられたのでした。

日本の伝統や文化を愛し、モダニズムと日本建築を融合した設計で知られるレーモンド。このエピソードから、タッカー師の想いに深く共鳴し、無償で依頼を引き受けたことが伺えます。

テクスチャ

玉砂利洗い出しもモダンなデザインとして巧みに落とし込まれている photo by いぶ

設計の実務を担ったのは、レーモンドの弟子である梶本尚揮氏。梶本氏は多忙な師匠の時間や気持ちに余裕のあるタイミングを見計らい、何度もスタディを繰り返しながら具体的な図面に落とし込んでいきました。

また、ファサードの特徴とも言える和紙貼りのステンドグラスやチャペルチェアなどの家具は、ノエミ夫人によるデザイン。現地での施工・設計監理は、建設地と縁の深かった竹中工務店のメンバーが担当しました。

ステンドグラス

デザインとしてはもちろん、和紙が光をやわらかく分散させる効果も photo by いぶ

和紙貼り

和紙貼りは細部まで丁寧に仕上げられている photo by いぶ

チェア

ノエミ夫人がデザインしたチャペルチェア photo by いぶ

教会関係者含め、建築に携わるすべての人が熱い情熱を傾けて作った、という事実を知ると、あたたかく包み込まれるような聖堂の雰囲気の理由がわかるような気がしました。

2段階の勾配でデザインされた特徴的な屋根は、レーモンド建築の特徴である「鋏状トラス」と、それを補強するレンガ造のバットレスで支えられています。

トラスの素材には北海道産のトドマツ丸太が使用され、構造体でありながら空間にやわらかなリズムを与えています。

トラス

連続する「鋏状トラス」 photo by いぶ

トラス拡大

トドマツの力強さが、北海道ならではの空気感を醸し出している photo by いぶ

小さな礼拝堂のすみずみにまで宿る、祈りと情熱、そして丁寧な手仕事の気配。札幌聖ミカエル教会は、建築というかたちを借りて、人々の想いが静かに息づく場となっています。

建築情報

建築名 札幌聖ミカエル教会
設計者 アントニン・レーモンド
竣工年 1960年
住所 北海道札幌市東区北19条東3丁目4-5
利用時間 8:00〜17:00頃まで (日曜の13時頃まで及び月曜午前中は見学不可)
備考 第13回札幌市都市景観賞
▶︎HP

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真駒内滝野霊園 頭大仏殿

頭大仏

頭大仏 photo by たいき〜

北海道札幌市南区にある真駒内滝野霊園(まこまないたきのれいえん)にある、頭大仏殿は、建築家の安藤忠雄氏が設計した。

既存の石像大仏を中心とする礼拝空間の整備計画であり、もともとは平地に鎮座していた高さ13.5mの大仏をラベンダーの丘で覆い、頭部だけ外部から見えるように計画された。ランドスケープと調和し、霊園の新たな形が示された例であろう。

シンボリックで圧倒的な「頭大仏」は、御霊を見守る顔を除き全てがラベンダーの丘にいだかれることから名付けられた。

大モアイ像

大モアイ像 photo by たいき〜

大仏殿へのアプローチ(1)

大仏殿へのアプローチ(1) photo by たいき〜

大仏殿へのアプローチ(2)

大仏殿へのアプローチ(2) photo by たいき〜

大仏殿へのアプローチ(3)

大仏殿へのアプローチ(3) photo by たいき〜

安藤氏の特徴的なコンクリート構造が印象的であり、シンプルで力強い造形美が訪れる者を圧倒する。その建築的手法は、自然の中に静かに溶け込みつつも、建築物として独自の存在感を放っており、建物の内外に広がる景観の一部として感じられる。

遠眺でみる大仏殿の頭

遠眺でみる大仏殿の頭 photo by たいき〜

春は新緑、夏(7月ごろ)はラベンダーの紫で彩られる。

この霊園は、単なる墓地の枠を超えて、自然、建築、そして精神的な要素が融合した、深い意義を持つ場所になっている。

建築情報

建築名 真駒内滝野霊園
設計者 安藤忠雄
竣工年 2016年
住所 北海道札幌市南区滝野2
利用時間
HP

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トマムの名建築

水の教会

「水の教会」は、星野リゾート トマムにある、安藤忠雄氏設計の教会建築。

周囲の雄大な自然と、建築が見事に溶け合うその空間は、訪れる人々に言葉では表現しきれない静けさと感動を与える。

photo by たいき〜

この教会の特徴的な要素は、中央に広がる大きな水盤。その水面は、周囲の景色をまるで鏡のように映し出し、四季折々の風景がゆっくりと変化していく。水面に揺れる光、風、そしてそれを取り巻く自然。すべてが静かに交わり、まるで一つの生命体のように呼吸しているかのよう。

バックライトに照らされ、水面に映る十字架の風景は幻想的な雰囲気を生み出す。

photo by たいき〜

実際に行ってみなと分からない、建物が自然に寄り添い、逆に自然が建築に命を吹き込むような、言葉では表しきれない深い調和は、今までに味わったことのない空間体験であった。

星野リゾートのトマム ザ・タワー photo by たいき〜

建築情報

建築名 水の教会
設計者 安藤忠雄
竣工年 1988年
住所 北海道勇払郡占冠村中トマム
利用時間
HP HP▶︎

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