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【建築MAP】自然を生かした建築家・建築史家、藤森照信の建築一覧

藤森 照信

藤森照信は、日本の建築家であり建築史家。自然素材を多用した独自のデザインが特徴で、草屋根や土壁などを活かした建築作品で知られている。また「建築探偵」として古建築の研究や保存活動を通じて日本建築の魅力を広めている。

藤森 照信の記事一覧


藤森照信の建築一覧

ねむの木こども美術館「どんぐり」

ねむの木学園は、女優の宮城まり子氏が1968年に設立した肢体不自由児の養護施設。脳性まひの子供役を演じたことを機に障害児教育への関心を深め、1968年に私財を投じて設立した。

本施設は、学園創立後の集大成として計画された3棟目の美術館であり、宮城まり子氏が浜松市の秋野不矩美術館を見て藤森照信氏に設計を依頼した。

名前の通り「どんぐり」のような自然に溶け込むかわいい外観が特徴的な美術館である。当初は御前崎市にあったが、1997年に現在の掛川市に移転してきた。

外観入り口 photo by たいき〜

建築的な特徴の1つ目は「手もみ銅板の葺き屋根」。藤森建築でお馴染みの工法であり、学園の子どもや職員とともにつくられた。

2つ目はねむの木学園内で伐採された「栗の木の柱」。外観からも見てとれるが、内部空間にも現れる。不均一な柱が、漆喰や屋根材、子ども達の絵などと上手く組み合わさっている。

3つ目は切妻の棟部分を緑化した「芝棟」。屋根の上に土が盛られ、草を植えた棟である。

それらの特徴、そして子どもたちの絵が描かれた漆喰の壁や木材などの自然由来の素材がこの地の自然に溶け込んだ建築になっている。

中庭ベンチ photo by たいき〜
外観 photo by たいき〜

写真撮影禁止の内部空間は、子ども達によって作られた作品が並び、柔らかなトップライトからの光が漆喰に溶け込み、どんぐり状の内部は大空間になり圧倒される。

ねむの木村の中には他に坂茂氏設計の「ねむの木学園美術館『緑の中』」、中村昌生氏設計の「吉行淳之介文学館」があり、訪れる際には合わせて巡ることがおすすめ。

看板 photo by たいき〜

建築情報

建築名ねむの木こども美術館「どんぐり」
設計者藤森照信+内田祥士(習作舎)
竣工年2007年
住所静岡県掛川市上垂木3399-1
利用時間10:00〜17:00(入館は16:30まで)
備考第24回静岡県建設業協会賞 建築部門 最優秀賞
HP▶︎
施工中の様子(石川建設HP)▶︎

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浜松市秋野不矩美術館

静岡県浜松市にある秋野不矩美術館

秋野不矩作品との調和をコンセプトとして、藤森照信氏により設計された美術館である。

秋野不矩(1908-2001):日本画を中心に活動し、自然と動植物を主題にした作品が多く、特に南インドの風景や生活を描いた作品で知られている。独特の色彩と温かみのある画風が特徴。

外観 photo by たいき〜

屋根葺きは長野県諏訪産の鉄平石、外壁はワラと土を混入した着色モルタルと地産の天竜杉板を用いている。雨どいは、ヒノキとサワラの半丸太であり、雨の日にには雨どいから滝のように流れ落ちる光景が楽しめる。

二階通路 photo by たいき〜

壁面に用いられた漆喰、藤ござの通路、大理石の床など、自然素材をふんだんに活かした建築であり、天竜杉もふんだんに使用されている。

階段 photo by たいき〜
展示室 photo by たいき〜
テラス photo by たいき〜
茶室「望矩楼(ぼうくろう)」 photo by たいき〜

2018年には敷地内に茶室「望矩楼(ぼうくろう)」がつくられた。天竜ヒノキなど地産材が用いられた個性的な外観である。

建築情報

建築名浜松市秋野不矩美術館
設計者藤森照信
竣工年1997年
住所静岡県浜松市天竜区二俣町二俣130
利用時間9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日
HP浜松市秋野不矩美術館HP

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空飛ぶ泥舟

外観 photo by たいき〜

茅野市にある3つの「フジモリ茶室」のひとつである「空飛ぶ泥舟」は、茅野出身の建築家、藤森照信氏が設計した空に浮かぶ茶室である。

4本のワイヤーで吊り下げられ、地上約3.5mに浮かんでおり、黄土色の土壁と銅板葺きの屋根、丸みを帯びたフォルムが特徴的。サイズは長さ2.7m、幅1.8m、高さ2m、重さ600kgであり、底部に2本のワイヤーが通されており、両脇の支柱からハンモックのように吊られている。

2010年に茅野市民館主催のワークショップで製作され、2011年に今の場所に移設された。

※個人所有のため、ツアーやイベント等を除いて建物内部への立ち入りは禁止。

外観 photo by たいき〜

文・写真:たいき〜

建築情報

建築名空飛ぶ泥舟
設計者藤森照信
竣工年2011年
住所長野県茅野市宮川389-1
利用時間
HP茅野観光ナビ

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高過庵

外観 photo by たいき〜

長野県茅野市にある3つの「フジモリ茶室」のひとつである、茅野出身の建築家、藤森照信氏が設計した木の上の茶室「高過庵」。

地上6.5mに、2本の栗の木の上に建てられている。現地茅野市の山から伐り出した8mの栗の木を用いており、そのの上に茶室が建てられている。栗の木は虫に強く腐りにくい性質を持っており、木質も硬いため強度や耐水性が高い木材だ。

茶室の躙口(にじりぐち)は地上から6.5mにあり、ははしごを用いてそこまで登る。自らの手ではしごを登り、景色の変化を楽しむという、茶室までのアプローチも魅力的だ。

藤森氏によると、縄文人は寝る時に限り「高さ」を必要としていたという。これは蚊の媒介するマラリアを防ぐためだといい、鳥の巣のような高いところに寝たのだとか。人間が根源的に持っている野生本能としても、地上から離れた心地よい空間なのだ。

子供の頃につくった木の上の秘密基地のようなワクワク感もあり、見た目も少し怖いが面白い、見ておくべき建築だろう。

また、アメリカ「TIME誌」の「世界でもっとも危険な建物トップ10」にも選ばれている(1位はピサの斜塔)。

外観 photo by たいき〜

文・写真:たいき〜

建築情報

建築名高過庵
設計者藤森照信
竣工年2004年
住所長野県茅野市宮川389-1
利用時間11:00-18:00
HP茅野観光ナビ

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多治見市モザイクタイルミュージアム

なぜか、ふしぎな、うつくしさ。

多治見市笠原町は、施釉磁器モザイクタイルの発祥地にして全国一の生産量を誇る。そんな町にある多治見市モザイクタイルミュージアムは、タイルについての情報が何でも揃い、新たな可能性を生み出すミュージアムとして誕生した。

設計を手がけたのは、独創的な建築をつくる藤森照信氏。

外観 photo by たいき〜

タイルの原料である粘土を思わせる外観は、ノスタルジックな印象を与える。

中に入り階段を経て各所室に接続するが、階段の上に導くような光がお気に入り。

ざらざらした質感の壁面にあたり優しい光となっており、つい手でペタペタ触りながらゆっくり移動してしまう。

階段 photo by たいき〜

4Fにある常設展示室ではタイルの様々な用途を示している。

壁画、トイレ、そしてオブジェなどがあり、タイルにしか出せない色味や質感を用いた空間作りやプロダクトの創造力が刺激される。

展示室 photo by たいき〜

また、この常設展示室の開口はガラスなどが付けられておらず、そのまま外部に接している。

タイルに反射する柔らかい光と空気の良い風が通り、なんとも心地よい空間だ。

展示室の通気孔 photo by たいき〜

建築情報

建築名多治見市モザイクタイルミュージアム
設計者藤森照信
竣工年2016年
住所岐阜県多治見市笠原町2082-5
利用時間9:00-17:00(最終入館は18:30)
HPHP▶︎

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ラムネ温泉

大分県竹田市に、山の中にお伽話に出てくるような世界観のラムネ温泉はある。

1934年に、文豪・大佛次郎が世界屈指の炭酸泉「長湯温泉」を「これぞ、ラムネの湯だぜ」と世界に紹介し、2005年に建築家の藤森照信氏の設計によって、世界に誇る温泉「ラムネ温泉館」は開館した。

外観 photo by たいき〜

外観には焼き杉と漆喰が持ちられ、屋根には手で凹凸をつけた銅板が張られた茅葺き屋根というしつらえであり、黒と白のストライプ柄が印象的。

大浴場と家族風呂があり、それぞれ42℃の内湯と、銀色のしゅわしゅわとした泡が体を包む32℃の外湯(露天)、簡易的なシャワーがある。大浴場にはサウナルームも用意されている。

大浴場は洞窟のような空間であり、茶室の「にじり口」のような入り口を通り、唯一無二の空間体験ができる。

photo by たいき〜

建築情報

建築名ラムネ温泉
設計者藤森照信
竣工年2005年
住所大分県竹田市直入町長湯7676-2
利用時間10:00〜22:00
定休日:第1水曜日(※1月と5月は第2水曜日)
HPラムネ温泉

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藤森照信の建築作品年表

作品名 場所
1991 神長官守矢史料館 長野県茅野市
1995 タンポポ・ハウス 東京都国分寺市
1997 ニラハウス・薪軒 東京都町田市
1997 浜松市秋野不矩美術館 静岡県浜松市
1998 一本松ハウス 福岡県福岡市
1999 ザ・フォーラム・炭軒 新潟県妙高市
2000 熊本県立農業大学校学生寮 熊本県合志市
2000 赤瀬川家の墓 神奈川県鎌倉市
2000 ツバキ城 東京都大島町
2001 不東庵工房 神奈川県足柄下郡
2003 一夜亭 神奈川県足柄下郡
2003 庭瀬家の墓 神奈川県鎌倉市
2003 矩庵 京都府京都市
2004 高過庵 長野県茅野市
2005 養老昆虫館 神奈川県箱根町
2005 ラムネ温泉館 大分県竹田市
2006 茶室 徹 山梨県北杜市
2006 ねむの木こども美術館「どんぐり」 静岡県掛川市
2006 玄庵 長野県茅野市
2007 焼杉ハウス・松軒 長野県長野市
2008 コールハウス 栃木県宇都宮市
2009 ROOF HOUSE 滋賀県近江八幡市
2009 チョコレートハウス 東京都国分寺市
2010空飛ぶ泥舟長野県茅野市
2012はま松ハウス静岡県浜松市
2014トタンの家東京都国分寺市
2014神勝寺寺務所 松堂広島県福山市
2015草屋根滋賀県近江八幡市
2016多治見市モザイクタイルミュージアム岐阜県多治見市
2016銅屋根滋賀県近江八幡市
2016栗百本滋賀県近江八幡市
2017白金の家東京都港区
2017せん茶茨城県水戸市
2017低過庵長野県茅野市
2019e.(イードット)本店東京都台東区
2021高部公民館長野県茅野市
2021五庵東京都渋谷区 → 長野県茅野市
2023小泊Fuji長野県富士見町

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